2013年10月21日

90. 傾向と対策

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ふたつの川は合流していた。それぞれ独立では影響の無い物質が混ざった時初めて害をなすのか、単に絶対量が増して閾値を超えてしまうのか。

危ない目に遭いながらも敢行した調査ですが、何が子供達のお腹を壊したのか、よその家を空き家にしてしまったのか、残念ながらミツバチさんに分かるのは、上流で見つけたさまざまなうちのどれか(幾つかかもしれないし、全てかもしれない)に原因があるらしい、というところまで。スッキリ解決しなくてごめんなさい。ですが、実は私たち人間にとっても、現状はこんなものなんです。

人体には安全とされていたさまざまな化学薬品が当初説明されていた通りには減衰していないどころか濃縮されて溜まっていたり、規定通りに使えば安全なのに現場で希釈率が守られていなかったり、それぞれの現場では正しく安全に使っているのに、混ざると毒性が急激に上がったり。たくさんの虫がひっそり死んでいく中で、ミツバチさんだけは人間が群れを管理しているので「突然失踪」したのが見えているだけなのでしょう。そして、虫が先に死ぬのは、ただ人間より体が小さく致死量も少ないから。多くの毒物はヒトと昆虫を区別して選択的に攻撃するわけではなく、程度の差でしかありません。目に見えるミツバチさんたちの犠牲によって、見えない危険が静かに拡がっていることがわかってきました。

よく洗えば大丈夫と思われていた農薬ですが、強力な浸透性農薬の登場で従来の常識は通用しなくなっています。欧米のCCDの原因は農薬だけではないということは、農薬が安全ということとイコールではありません。ここがわかりにくいんですが。一定レベル以上のある種の農薬に晒されるとミツバチが死んだり巣に帰れなくなったりすることは既に実験でも証明されています。日本で養蜂家が農家を訴えた裁判では見舞金で示談になっていて「有害である」という記録が残らないのは隠蔽体質などではなく、補償がすぐ必要な養蜂家のための措置だと信じていますが困ったことです。農薬をやめてもCCDが治まらないから農薬はシロ! という思考は、譬えていうと、血を流して苦しんでいる人に対して「頭を殴るのをやめても血が止まらないから殴り続けてもいいね!」と言っているような筋違いの議論ではないかと思います。(前にも述べましたが、私は日本ではまだ現象としてのCCDは起きていないと理解しています)

重要なのは、犯人・悪者探しをするのではなく、皆にとって安全な世界になるように原因を究明することだと思います。関係者全員、誰にも悪意が無く、失敗もしていなくても問題が起きることはあり得ます。震災後も強く感じました思いましたが、同じ危険な世界に生きる者同士、意見の異なる相手を攻撃し合うのではなく異なる視野をもった同士として助け合った方がお互いにとって無駄も無く問題解決への近道となることでしょう。

諸先生方の尽力で安定して検査が行われ、放射性物質に関しては何をどう気をつければいいのか分かってきたと思ったら、検査が行われているのかいないのか、どんな種類でどんな毒性や影響があるのかさえよくわからない薬品を毎日口に入れていたかもしれません。

日本では危機感を持ったひとたちの働きかけで北海道や長崎などごく一部の自治体で使用が制限されている浸透性のネオニコチノイド系農薬も全国レベルでは規制されていません。地域によって大規模散布前に養蜂家に連絡がなされる/問い合わせれば教えてくれる/問い合わせても教えてくれない、など対応に差があるそうです。養蜂家でなくても、大規模散布前には全住民に光化学スモッグ注意報同様に防災放送などで報せるべきではないでしょうか。小さなお子さんのいる家庭など、そんな日には外で遊ばせたくないことでしょう。

殿下が引っ越しを考えているように、環境が悪化した時、訴訟も市民運動もできないミツバチさんにできるのは巣を捨てて逃げることだけです。「ニホンミツバチはすぐ逃げるので飼いにくい」とされますが、この「逃去性」はミツバチさんの立場に立てば自衛手段ですから長所だと私は思います。だからこそ明治時代からの西洋蜜蜂の導入と森林伐採・非蜜源植樹・土地開発やその他の環境の劣悪化にも拘らず今日まで生き抜いてくれたのだと。

ブログなどでしばしば「理由もなく逃げた、本当に神経質だ」などという記述を目にすることがありますが、ミツバチさんの立場から言えば、今回の話のように何かの危険を察知して引っ越したのかもしれないと理解してあげてほしいです。ミツバチさんにとっても巣板を一から作り直すのは大変な負担なのですから、意味も無く気まぐれに引っ越すはずがありません。

今、CCD問題を受けて「西洋ミツバチが駄目ならニホンミツバチ」とばかりにニホンミツバチの品種改良に利益が見込まれるようになり活気づいているようですが、環境に敏感な性質を「神経質」、群れを守るための「逃去性」を「飼いづらい」欠点として品種改良によって減らそう、無くそうというのは、ニホンミツバチさんが長年築いてきた生きる戦略を否定し、奪うことです。人間の都合で女王蜂を1年で取り替えてしまうから効率を考えてでしょう、人工授精で女王蜂に本来必要な受精回数より圧倒的に少ない受精しか行われていないことも、雄蜂たちが命がけで守ってきた「遺伝子の多様性による群れの強さ」を奪う結果になることは明白で、心配です。長い目で見るとニホンミツバチという種を弱体化し、それでも押し進めれば、いつかニホンミツバチ独自のCCDへと追い込むことになるのではないでしょうか。杞憂ならいいんですが。

さて漫画に戻りますと…

いろいろ提案しようと追いかけてもなかなか会えない女王様の方からお呼びとはお珍しい。一体何の御用でしょう。

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posted by せいちんデザイン at 05:04| ミツバチ漫画