2013年09月30日

69. 毒の花

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虫に頼らず風で授粉を行う風媒花なら花粉を持ち去られたくないかもしれませんが、一般によく目立つ美しい花は蜜の用意があるから花粉を運んで欲しいというサインです。

蜂より蝶に来て欲しい花もあり、そういう花は蜂には吸いにくい/吸えない形状に進化していたりしますし、ミツバチさんが食べたら命にかかわる毒の蜜を出す花もありますが、我らが働き蜂さんは知らない花からは花粉を集めていないと言っているため、雄蜂殿下はこれまで協力関係にあった花が突然毒に花粉を持つようになった可能性を検討し、否定しています。

花のせいでないなら、どうして子供達のお腹が悪くなったのでしょうか。花に着せられた汚名を晴らすため、立ち上がった働き蜂さんと雄蜂殿下! 続く。

※盗蜜とは、花が花粉媒介の報酬として用意している蜜を、正規の手順を踏まず、従って花粉を運ばずに蜜だけ得ること。花に穴を開けたり、破壊したり、長い舌で蜜だけ吸ったりなど、いろいろ手段はあります。ミツバチさんは盗みません。でも、ハナバチさんが開けた穴があったりすると、ちゃっかりもらったりはするそうです。だって、ミツバチさんには、それがいけない穴だとはわかりませんから! なぜ吸うのか、そこに蜜があるからだ! 以上。

以前西洋ミツバチが押し掛けて蜜を盗んで行ったことがありますが(24. 白昼強盗)、蜂の蜂による蜂相手の蜜泥棒は「盗蜂」として盗蜜とは区別されています。蜂を盗んでいくわけでもないのにね〜。でもそんなこと言ったら「盗人」も人を攫っていくわけでもないのでした。

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posted by 原山みりん at 05:47| ミツバチ漫画

2013年09月29日

68. かんながけ

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せっかく集めてきた花粉を食べた子供達がお腹を壊し、身に覚えがないのにその責任を問われて閑職をあてがわれた働き蜂さん、殿下との通信も分断され大ピンチ!

…そうでした、プラプラ得意な殿下の方から来れば問題なかったのでした。

続く。

社史編纂室なんて終身雇用時代の思い出話で置いてくれるだけマシ、今は追い出し部屋らしいですよ、働き蜂さん! あ、ミツバチさんの社会は昔も今も終身雇用制でしたね。

さて、「かんながけ」は、そうです、実際には製材しているわけではなく、それっぽい動作をしているだけなんです。では何なのか、というと、発見者、25匹の働き蜂の動きを羽化から22日間、221時間に渡って観察し続けた愛と根性の人、大谷剛さんの原文を、ちょっと長いですが編集すると正確さと体温が失われるので、そのまま引用します。

”表に示した25個体のうち、一番「仕事」をしなかった印象の強いのは3699ですが、数値の上では意外にも働いた方です。(羽化後2日から22日までの221時間の観察のうち、勤務時間は46%、一日あたり11時間勤務)。この個体はB1(巣室に頭から入り込んでいる。仕事中か休息中か、はっきりしない)とWx(ロウを齧っている)が長く、Wxも巣の周辺部のロウをいい加減にー熱心ではないが長く続けてー齧っていたのです。B1も空き室がかなり多かったと記憶しています。(B1とWxを除くと仕事時間は4.8時間に低下。なお表4はB1とWを除いた数値)。多くの仕事もちょっとやっては他の個体にとられ、または任せ、ブラブラしながら次の仕事に少し手をつけるという印象でした。また他個体にあまり見られなかった「かんなかけ行動」(巣壁でかんなを掛けるように体を前後させ、脚で壁面をなでる動作を繰り返す)が多く、これは仕事に含めませんでした。私はこのかんなかけを檻の中の熊の往復運動と類似のものと見ています。つまり、仕事がやりたくても他個体に取られてしまうので、一種のフラストレーションに陥り「かんなかけ」をするというわけです。"(『ミツバチの世界』/坂上昭一 より引用)


絶版で手許にないと言ったばかりの坂上先生の『ミツバチの世界』ですが、なぜ逐語引用できるかというと、重要な箇所と好きな箇所はノートをとっておいたからです。コピーではなくタイプしたのでタイポは心配ですが…。名著なので中古でもいいから買わなくちゃ! 復刊ドットコムに出すべきでしょうか。

強制収容所では囚人を苦しめるために強度が高く消耗の激しい穴掘りをさせることが多いのですが、さらにこの穴を埋めさせ、また掘らせる、ということをすると気の毒な囚人達には、かなり堪えるそうです。埋めたばかりの穴なら掘りやすいのではないか、とか、そういう話ではなく、無意味な労働をしているという無視できない事実が精神的に厳しく心が折れるのだそうです。

従って、この「かんながけ」は、大好きな蜜集めを禁じられた働き蜂さんが(罰として?)命じられる仕事として適切なように思いました。

ところで、後の坂上先生の著書『ハチとフィールドと』では、大谷さんの同じ観察記録が表として使われていますが、さりげなく「かんなかけ」にあたる労働が「特殊清掃」に名称変更されており、しかも花粉押し固めと位置が逆になっています。これに対する説明は、この著作中にはありません。『ミツバチの世界』以後にかんながけが実は巣の衛生条件向上に役に立っていた、などの新知見が得られたのもしれませんが、それは私には今のところ不明のままです。

この「かんなかけ」の発見からわかる重要なことは何かというと、仕事がなくなったらスイッチが切れるように休んだり寝たりする働き蜂さんばかりではないということです。労働意欲に差があることが群れを強くする、ということは前にも言いましたが、個性の発現は労働意欲の差だけではなく、意欲はあるのに要領が悪い(でも仕事したい)、というような個性もあり、実にいろいろだということです。

ミツバチは超個体であり、群れを個体と考えるべき、との考え方は子供の頃に学校で教わりましたが、それでもじっと見ているとそれぞれに個性があって何事かを考えており、同じ現象に対する反応が一律ではないことがわかってくる、このあたりがミツバチさんに魅了されていく人が後を絶たない理由のように思います。巣を守って倒れる働き蜂さんの犠牲に涙することが血小板が傷口を塞いで自身は働きを終えることを悲しむのと同じ、と割り切ることはできない何かがあります。それはすなわち、個体が脳を有し、そこに個性が見られることではないでしょうか。

見かけだけでもすごくかわいい、ということを置いても、です。

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posted by 原山みりん at 05:48| ミツバチ漫画

2013年09月28日

67. 謹慎

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一生懸命外で働いて来たというのに、覚えの無いことを責められて大好きな蜜集めを禁じられた働き蜂さん、殿下は外で待っているし愚痴をこぼそうにも助けを求めようにも外出禁止。働き蜂さん最大の危機到来か!

かんなをかけながら泣いてしまう働き蜂さんですが、決して蜜集めを愛するあまり大工さんの仕事を軽んじているわけではありません。が、それについてはまた明日。

続く。

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posted by 原山みりん at 06:40| ミツバチ漫画

2013年09月27日

66. ヨウホウの父

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「三角関数? 何に使うんだよ、だりー!」
「三角関数はすごいですよ! ピラミッドだって三角関数を使って計算されているのです!」
「俺ファラオになる予定ねーし!」(←計算は技師の仕事だと思うよ)

誰でも三角関数/積分/因数分解で苦し紛れに先生にこのように絡んだことがある、あるいは絡む人を見たことがあるのでは。先生もヘタクソですよね。ピラミッドなんてぶっ飛んだ例ではなく、「シューティングゲームで手抜きなサインカーブの敵の動きを見切りやすくなる」とかもっと卑近な例を出さなくちゃ! わかってても吸い込まれて衝突するんですが…。

さて、英語でこれに当たるのが

「古い英語なんてイラネー! アメリカ英語の方が将来仕事で使えるんじゃね?」
「シェイクスピアが原文で読めますよ!(ウットリ)」
「え〜、読みたきゃ日本語で読むしそのうち漫画化されんじゃね!」

ではないでしょうか! ちなみに生徒は私ではありません。

でも、シェイクスピア英語も、実はずーっとずっと後になって思いがけず蜜蜂さんにハマッた時に英国養蜂の父の著書を原文で読めるという恩恵があったのでした。これは予測できなかった! というわけで、故ジョブスも「人生に無駄なものなどない」と言っているように、乏しい資源を最大限に活用することが上手な(本当に古い、なにげない情報を引き出して間に合わせたりしますよね)人間の脳の栄養として、いろいろな体験はもちろん、わざわざむこうから教えてくれるというものを拒否するなんてもったいないことです。ああ、もっと真剣にやればよかった!

枕が長くなりましたが…

地図でヤケクソになって文字も読めることにしたわけではありません。これは「お悩み相談」「広報」のような番外編だと思ってください。蜜蜂さんサイズのシェイクスピア時代の原本も多分現存しないと思います!

漫画の中に原文が使っている単語を入れたのは、「雄蜂=怠け者」とする箇所が、雄蜂(drone=怠け者の意味もある)を私が誤訳しているのではなく、わざわざidle companionという別単語を使うことで養蜂の父が意図をハッキリとさせていることを伝えたかったからです。

「今でこそ蜜蜂が足りない、授粉がされない!」という叫びが上がって蜜蜂さんの仕事の大切さが理解されつつありますが、昔は蜜蜂が蜜を吸うと花が弱る、と、信じられていた時代もあるそうです。次の飼育書の著者があるいは参考に、あるいは引用にし、またその次が…と繰り返し今に至るためか、現代の飼育書も子孫を残すという役目があることはさすがに書いてありますが、雄蜂に対する基本姿勢は大差なかったりします。現在の雄蜂さんたちが受けているひどい扱いについて、草分けのこうした態度が後代に与えた影響は大きいような気がします。

人は先入観に割と弱いですから。とりあえず、わからないことを断言するのはよくないですよね。わかっていないということをわかっていないから断言してしまうのですが。

本当に現れて反撃してくれないかな、養蜂の母!

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posted by 原山みりん at 05:35| ミツバチ漫画

2013年09月26日

65. 目印

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蜜蜂さんは初めて外勤に出る前は巣を見ながらホバリングして周囲の情報を覚えているらしい「定位飛行」と呼ばれる訓練をしますが、そこから始まって巣の四方八方を飛び回るうち、頭の中にはかなり正確で緻密な地図が出来上がるらしいです。

そもそも蜜蜂さんの暮らしをできるだけ忠実に描くという掟(マイルールですが)を破ってまで筆を持たせた理由の一つには、蜜蜂さんの頭の中にある地図を私も見せてもらいたかったから、というのがあります。

すごいなと思うのは、土地勘がないうちはコンパスや匂いを頼りにして帰巣しているのが、慣れてくると視覚情報を優先するあまり、人間がいたずら…じゃなくて科学的実験のために周辺のものや巣箱そのものの位置を変えたり、色を変えたりすると、ついだまされてしまうところです。でも客観的情報も、探す能力も持っているので「あれっ?」となった後は、かなりひどいいたずらであっても、多くの場合はキチンと元の巣を見つけて帰るのですね。

だまされるなら、すごくないではないか、と思ってはいけません。人間も慣れてくると「こうなっているはず」との見込みで行動して同じように勘違いをしますよね。蜜蜂さんのように小さな体でも、そのように情報の優先度があり、ルーチン化した行動には脳の省力化が行われるというところがすごいではないですか。

私は蜜蜂さんを好きになっていろいろ本を読むようになるまでは(つい最近のことです)、昆虫の行動は化学反応のように一本化された処理だと思い込んでいたので、今も毎日ビックリさせてもらって楽しいです。

日本のミツバチ博士と呼ばれる故坂上先生が著書『ミツバチの世界』で言っておられた、人間と昆虫とは発生の過程がお尻から、口から、と、別の系統なので人間が全ての頂点なのではなく、蜜蜂は違う系統の頂点なのだということを認識すべきである、との言葉の重みをCCD問題について考えていると、つくづく感じます(言葉はうろ覚えです。名著なのに絶版で図書館で借りて読みましたが手許には無いものですから)。

ちなみに、葛が原は焼いたくらいでは「大丈夫、すぐ戻る」のは本当です。うちの近所の、日本蜜蜂さんを見かけた葛は今は花が終わっていろいろな虫さんたちの仕事の成果として毛むくじゃらの豆鞘がいっぱいぶらさがっていて、触るとフサフサと気持ちがいいです。放置してくれているご近所さんありがとうございます!

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posted by 原山みりん at 05:45| ミツバチ漫画